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東京地方裁判所 昭和27年(モ)5997号 判決

申請人 箕浦慶夫 外二名

被申請人 株式会社日立製作所

主文

当裁判所が右当事者間の昭和二十五年(ヨ)第二八八九号地位保全仮処分申請事件につき昭和二十七年七月七日なした仮処分決定を取消す。

申請人らの申請を却下する。

訴訟費用は申請人らの負担とする。

本判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一申請人らの申立とその理由

申請人らは「主文第一項掲記の仮処分決定を認可する」との判決を求め、その理由を次のとおり陳述した。

一、被申請人会社(以下単に会社ともいう。)は電気機械その他の製造販売を業とする株式会社であつて、事業所として本店を東京都におき、全国各地に多数の工場営業所等を有しているが、その事業所ごとにその従業員で組織せられる労働組合(以下単に単位組合亀有組合などという)があり、この単位組合は共通事項について共同統一闘争のために日立製作所総連合(以下単に総連合という)を結成し、総連合及び各単位組合は併行的に会社と団体交渉を行う権利を有している。

二、申請人らはいずれも会社亀有工場の従業員であつて、かつ亀有組合の組合員であるところ、会社は昭和二十五年五月八日開かれた総連合と会社との間の賃上要求に関する団体交渉の席上会社従業員五千五百五十名の人員整理をなす旨及びその整理基準竝びに退職金支給基準を発表し、申請人らに対して予告手当を提供して同月二十七日付で人員整理のため解雇するとの意思表示をなした。

三、しかしながら右の解雇の意思表示は次の理由によつて無効である。

(一)  会社は本件人員整理については後記の理由により総連合ないしは各単位組合と充分な協議をなした上でなさなければならないのに何らの協議なくして行われるから無効である。即ち本件人員整理のなされるに至つた経緯は次のとおりである。本件人員整理案の発表されたのは前記のように昭和二十五年五月八日開かれた総連合との団体交渉の席上であるが、右の団体交渉は総連合が各単位組合の要求をとりまとめ同年四月五日会社に対して「組合員一人平均一万二千円の賃上要求」案を提示し、これについて同月十二日から行われてきたのであるが、第五回団体交渉に至るまで会社はその内容に触れずに遷延策をとるだけであつた。ところが右第五回団体交渉の席上会社は賃上要求の回答にかえて突如として「当社の現状と今後の経営方針」なるものを読み上げ、前記の人員整理案を発表し、その後同月十九日までに人員整理案の説明と交渉を完結したいと申入れてきた、そこで総連合は各単位組合と協議する必要があるので急拠同月十八日縮少中央代議員会を清水工場に開催し、その決定にもとずいて同月二十日午後一時より団体交渉開催の申入の通知をしたのであるが、会社はその交渉結果をまたず同月二十日早朝各事業所ごとに希望退職者の募集を始め、一方的に人員整理の実行に着手した。しかして、右のような雰囲気のうちに団体交渉は開かれたが、会社は五千五百五十五名の整理は既定方針であるとして交渉に応じないという態度に終始し、ついに翌二十一日午前十時五十分会社は一方的に交渉打切りを宣言した。しかして一方会社は申請人らの属する亀有組合と団体交渉はしたけれどもこの人員整理案については協議できないという理由だけで何らの結論もでていないのである。

以上のとおり会社は本件人員整理については総連合ないし亀有組合を含め単位組合と何らの協議をしていないところ会社は次の理由によつて協議しなければならない義務を負うていたのである。

(1) 総連合と会社及び各単位組合と会社との間にはそれぞれ昭和二十二年一月二十一日締結された労働協約が存在する。しかして右協約は六ケ月ごとに更新せられており、昭和二十四年六月十四日会社は同年七月二十日の期間満了と同時に協約のすべてを破棄すると通告してきたけれども、右各労働協約にはいわゆる自働延長規定があつて新協約のできるまで旧協約の効力は存続することとされており、前記破棄の通告後新協約の締結について協議したが本件人員整理当時締結に至つていないから、旧協約は存続するものといわねばならない。右の自働延長規定は労使双方の合意に基いて定められたのであるから労働組合法第十五条第二項の規定にかかわらず旧協約は存在する。ところで右の亀有組合との協約第十五条には「企業整備その他重大な事情が起つても会社はあらゆる合理的な施策を講じて従業員を解雇しない。」とあり、同第十四条には「従業員の生活に大きな事項については会社は事前に組合の諒解を得て行う。」また同第三条には組合員の解雇については組合の異議申入権があり、異議申入があつた時は会社と影響を及ぼす組合とは双方協議することになつている。また総連合との協約には第二条に「重大なる会社機構及び職制の改廃は総連合との協議を経て之を行う」ことになつている。

かくの如く会社は本件人員整理についても労働協約上組合と充分に協議して決定すべき義務を負うていたのである。

(2) 仮に本件の労働協約が協約として期間満了により失効しているものとしても、右の協約中の各条項はいずれも労働条件に関する規定であり、余後効をもつこと勿論であるところ、組合は依然として存続しているのであるから、協約が失効しても余後効により会社は組合と人員整理について協議しなくてはならない。

(3) さらに従業員の身分に重大な影響をもつ事項については会社は事前に組合と充分に協議して決定してきたのが会社職場における慣行である。したがつて、本件人員整理についても会社は慣行上組合と協議しなければならない。

(4) また、総連合と会社及び申請人らの所属する亀有組合と会社間にはそれぞれ労使双方の団体交渉によつて、解雇等組合員に重大な影響を及ぼす事項については会社は組合と協議する趣旨の約定がなされ、その旨協定書覚書等がとりかわされているにもかかわらず、かかる書面による協定を無視して組合と協議なしに人員整理をすることは許されない。

(二)  会社は本件人員整理をなすに当り前記のように一応整理基準を発表した。ところが、会社は申請人らに対し解雇通知をなすに当り、どの整理基準に該当するかを示しておらず、また、申請人らは会社の示したどの整理基準にも該当しない。故に申請人らに対する本件解雇の意思表示は何ら正当の事由に基かないものである。

(三)  また、申請人らは組合活動を活溌にしてきたものであるところ、会社は企業整備に便乗して申請人らを解雇したものであつて不当労働行為として無効である。

以上のように本件解雇の意思表示は無効のものであるところ、申請人らはその無効確認の本案判決の確定をまつときは、申請人及びその家族の生活は直接危険にさらされるものであるところ、右の解雇の意思表示の効力の停止を求めて仮処分申請に及んだもので、これを認容した主文掲記の決定は相当であるから、認可さるべきものである。

第二被申請人の申立と答弁

被申請人は主文第一項同旨の判決を求めその理由として次のとおり陳述した。

一、申請人ら主張一、の事実を認める。

二、同二、の事実中、申請人らが現に会社の従業員であり、亀有組合の組合員であることは争うがその余の事実は認める。

三、同三、の(一)事実に対し、会社は後記のとおり本件人員整理について亀有組合ないし総連合と協議する義務を負うものではない。のみならず、会社が協議義務を尽さなかつたのではなく組合が誠意ある交渉に応せずむしろ協議を避けたのである。即ち本件人員整理をなすに至つた経緯は次のとおりである。我国の経済政策は昭和二十三年末を境として従来の増産第一主義から賃金三原則経済九原則の実施により企業の合理化による自立態勢を図る政策に転換し、これがため均衡予算の実施となり、更にドツヂラインの堅持強化となつて赤字金融は停止され政府補給金も逐次廃止され、わが国の企業は等しく経営困難となり、企業合理化、人員整理は必須の条件となつた。而して会社における昭和二十四年上期(同年三月から八月まで)の受註量は八億四、五千万円であつて前期に比して約二割乃至三割の減少を示したのであるが、当時三万五千人の従業員を擁していた会社としては、これを維持するためには最低十五億円の受註を必要としたので右の受註量では資金は極度に逼迫し毎月二億円程度の資金不足を生じた。これを亀有工場についてみても昭和二十四年上期の受註量は約四千万円で前期の約六割に下落し同工場の従業員二千六百人を維持するためには最低八千万円の受註を必要とし右の受註の減少により毎月一千万円の資金不足を生じていたので人員整理を免れない状態となつたのである。然しながら会社は種々切抜策を考慮し人員整理を行わずにいたが、昭和二十四年下半期に至りついにこの状態を維持することは不可能な状勢となつたので、昭和二十四年末以来各事業所毎に原価査察を試みその一項目として適正人員の調査をも行つてきたところ、昭和二十五年三月二十四日完了した調査の結果によれば七千二百三十七名の冗員の存在することが明らかとなつた。かような状勢下において右の会社の窮状を熟知しながら総連合は従来のベースを一挙に六割増とする前記賃上要求を提出して来た、会社は到底これに応じ得ないことではあつたが、総連合の要求に対して審議を開始し、前述の状況と将来に対する見透しを考慮し各事業所幹部と慎重に検討した結果、前記のように組合要求を拒否し整理案を同時に発表したのである。したがつて会社は遷延策をとり五月八日に至つて突如として整理案を発表したという申請人らの主張事実は事実に反するものである。しかして右の整理案は最終的なものではあつたが、総連合の会社提案に対する真向からの拒否と、会社側の十九日までに交渉を終りたいという通告を無視しての期間徒過にも拘らず、会社は五月二十日、二十一日の両日にわたつて総連合の申出による団体交渉を行つたけれども、その交渉は前後二十数時間に及ぶもなお抽象論と揚足取りに終始し何らの成果も得られず、特に総連合は前記「当社の現状と今後の経営方針」を受理することすら拒み、会社の交渉に応ずる代りに各事業所においてストライキ、職場放棄、デモ行進等の実力行使のみならず吊し上等の暴力行為をもつてこれに応じ各所に刑事事件の発生すら見るに至り、かくて総連合には当初から誠意をもつて交渉する意図はみられなかつたのであり、また会社は単位組合に対しても図体交渉を申入れ、人員整理について協議説明をしようとしたけれども真向から反対するのみで誠意をもつて交渉に応じなかつたのである。

しかして会社は次に述べるとおり本件人員整理について総連合ないし組合と協議する義務は負つていないのである。即ち、

(一)  会社は申請人ら主張の労働協約に対しては申請人らも認めるとおり、昭和二十四年六月十四日組合に対し同年七月二十日に破毀する旨の意思を予告表示したのであるから、同年七月二十一日の期間満了をもつて右協約は消滅し、会社と組合間において本件人員整理当時有効なる協約は存在していないのである。尤も協約には自働延長に関する規定があつたけれども、労働組合法第十五条第二項の規定は協約の期限到来後においては当事者の一方がなした意思表示に反して効力を存続することを得しめないことを明示しており、確定期限を経過した後新協約成立に至るまで当事者一方の恣息による新協約締結の拒否によつて心ならずも従来の協約に拘束されねばならないとすることは衡平の原則に反する。既に労働協約が消滅した以上協約に基く組合との協議義務は存在しない。

(二)  労働協約の余後効によつて協議義務を負うとの申請人らの主張を争う。申請人らの主張する協議約款は一種の経営参加条項であつていわゆる協約の制度的部分に属するものであるから余後効を有するものではない。

(三)  会社の職場において従業員の身分に重大な影響を及ぼす事項について事前に会社は組合と十分に協議し決定するという慣行はない。元来労使関係は一種の勢力関係で協約の存続中はこれによつて、相互の力が平衡状態にあるけれども、協約が失効すればその平衡状態は破れるのであつて、さればこそ、会社は組合と従来協議をしてはきたが、それは組合との労働協約の存続期間中その条項に従つてなしていたに過ぎないのである。したがつて協約失効後は労使相互の力と力との角逐によつて自己に有利な状態を得んと努めるのは当然であり、申請人主張のような慣行を認めようとすることは労使関係を固定化し、その本質たる流動性を無視するものである。従来協約存続期間中において協議が数回繰返されたことをもつて慣行とすることはできない。協定を裏づける相互の勢力関係の平衡状態にまで凝結しない間はその協定は単なる力と力との激突場面においてなされたに過ぎずこれを慣行ということはできない。しかして協約の失効後一年も経ていない本件人員整理に至るまでかかる慣行の成立した事実はない。

(四)  会社と組合間に協定書覚書等をとりかわし解雇等重大な影響を及ぼす事項について会社と組合とは協議するという趣旨の協定をしたことはなく、特定の具体的事案についてこれが解決のために特に締結されたことがあるに過ぎずこれによつて申請人ら主張のように解雇等重大な影響を及ぼす事項すべてについて会社が協議義務を負担することとなるいわれはない。

四、同三の(二)の事実中会社が申請人らに対し整理基準のいずれに該当するかを示さなかつたけれども、それは申請人らの利益を考慮したからにほかならないのであり、申請人らは次のとおり別紙整理基準の各項に該当するものである。

(一)  申請人箕浦慶夫について

(1) 整理基準第四項該当事由

(イ) 申請人箕浦は日本共産党亀有細胞員であるが昭和二十五年四月十五日朝出勤時に亀有工場正門前で入門しようとする従業員一般に対し、他の細胞員とともに、「吉田部長の昇給は二十二パーセントでありその他会社幹部及び従業員の昇給率を発表し直に職場で昇給率の公開を迫れ」と記載した日共葛飾地区委員会名義のビラを配布しながら右従業員に対し「皆さんこれが吉田部長の昇給です」と大声連呼した。しかして亀有工場においては昇給率を厳秘していたが細胞員渡辺きみ子が聞き出したものを事実なりとし虚構の昇給率(吉田の分を除く)を右ビラに記載して、会社の意図を不当に暴露し、これによつて従業員をして会社に対し不信の念を生ぜしめるとともに従業員相互間の離間と不平不満を煽ろうとする目的に出でたものであることは明かであつて、これは会社業務に対する非協力を示すものである。

(ロ) 申請人と意図を共通にする亀有細胞員数名が昭和二十五年五月十一日朝前同様正門で従業員一般に対し、「職場にいる会社の手先と闘おう」という前記日共葛飾地区委員会名義のビラ(乙第二二号証の五の二三)を配布し、もつて輸送機械課で製作するレツキングクレーン(脱線顛覆した列車の復旧作業に使用するもの)は兵器であつて戦争における人殺しの道具であるという歪曲した事実と同課沢田組長が「仕事をやれ仕事をやることが首切を防ぐことだ」といつたことをもつて同人を戦争挑発者であり売国奴であり明らかに会社の手先だ労働者の敵だ軍需品の製造を拒否し職場にいる会社の手先と徹底的に闘え実力行使で共産党を守ろうと誹謗し宣伝した際右申請人はこれに呼応して就業時間中であるにも拘らず他の細胞員十数名を率い職場を離脱し同日から連日輸送機械課職場に赴き前同趣旨のことを宣伝強調しレツキングクレーン製作を督励する沢田組長を誹謗し同職場の生産を停止せしめるような事態を惹起した。

(ハ) 昭和二十五年五月十三日午前第一鋳造課で部分ストが行われていたが、申請人の属する職場である製造部工務係ではストの指令がなかつたに拘らず申請人は職場を無断離脱し工場幹部の会議を妨害するため工場長室前の秘書室に乱入の上更に暴力を行使し工場長室の扉を押し開けて同室に押入り居合せた幹部から再三の退去要求にも応せず同幹部と押合となり、二、三十分間会議の運行を不能ならしめた。

(ニ) 昭和二十五年五月十六日以降毎朝八時三十分頃から申請人は連日細胞員十数名を率い柏子木鉄片等を叩いて喧噪を極め職場内にデモ行進して従業員の合流方を煽動した。右のデモ隊は細胞員をもつて構成する純然たる細胞活動で組合の意思に反するものであり職場内において就業時間中政治活動を展開しこれに参加を煽動した。申請人の活動は職場離脱の煽動と就業時間中の活溌な政治活動の展開という面において非協力の具体的事実を示すものである。

(2) 整理基準第十項該当事由

(イ) 亀有細胞は昭和二十五年三月以降数回に亘つて工場が恰も軍需品を製造しているかのように虚構の宣伝をなし戦争反対軍需品生産反対というスローガン入りのビラを一般従業員に配布し戦争反対のスローガンに結びつけて生産意欲を失わそうとしていたが、同年四月申請人は右運動に呼応して就業時間中同僚梅田に対し「亀有工場も軍需品を製造しつつある。戦時中の亀有工場に戻る。」と事実を歪曲した発言をなし、従業員の生産意欲を阻害した。

(ロ) 同年四月十五日申請人の勤務する工務係職場会で申請人は多数従業員の面前で野坂副部長と論争中「今独占資本は大いに儲けている。工場は製品の発送の裏づけがなくとも工場幹部が運動すれば銀行から金を借りられる。」という発言をしたが、右発言は申請人が、当時工場の苦境打開のため真面目に働いて生産を挙げようとする幹部の意図を知りながら故意にこれに反対し、労働者は働かなくても幹部の努力で銀行から借金してくれば賃上は可能であると趣旨を宣伝したものであり結局軍需品の生産反対の煽動と一環をなし熱心に仕事に従事するなと煽動したものであつて、生産意欲を阻害するものである。

(3) 整理基準第七項該当事由

申請人は昭和二十五年四月中旬から五月にかけて業務外で無断離席すること多く、特に五月初旬以降は殆んど職場に出なかつた。そして上長の者は勿論職場の者もその所在がわからずたまたま本人を見付けて注意をすれば口論となりくつてかかる有様で全然反省の色を示さず、注意の与えようもなかつたので職場秩序を著しく紊乱した。

(二)  申請人戸沢照について

(1) 整理基準第四項該当事由

申請人は設備課冶工具係長として職制上従業員を監督指導する立場にありながら共産党亀有細胞の中核的存在であることから右地位を悪用し

(イ) 昭和二十三年八月以降職場在職期間中週に二、三回主として作業時間中にアカハタその他共産党関係出版物を職場内で執拗に売り歩き他の従業員の業務を妨害したがこれは政治活動により作業時間を徒費し係長たる地位にあるものとして業務妨害の程度が強いものである。

(ロ) 申請人は係員に対し作業上の指示注意を行うべき朝礼の時間において部下に対し共産党の宣伝活動を行い始業を遅らせていた。

(ハ) 冶工具工場で作業時間中ストーブの周囲で雑談中の部下の仲間に入り共産党の宣伝活動を行つた。これらの事実は係長たる地位を利用し作業時間中細胞活動をしたものである。

(ニ) 昭和二十四年三月亀有組合が産別全国金属労働組合を脱退するかどうかにつき投票を行つた直後申請人の属する設備課では脱退賛成者が多かつたので、申請人はその翌日職場で小島隆外数名に対して同課の闘争意欲が低いのは個人の収入が多くて生活が楽過ぎるからであるから組合運動にめざめさせるには作業分数を切下げる(収入が減少する)べきだと主張し、暗に係長である申請人の意向により作業分数の変更ができ全金属脱退の意思を変えなければ不利益となるよう脅迫し職場内に不安動揺を生ぜしめた。右は自己の属する共産党の利害のために工場内に不安動揺を生ぜしめることを意図したもので会社業務に非協力なことを示すものである。

なお作業分数というのは作業員の加給計算の基礎となるもので加給は時間請負制で作業の標準時間に時間賃率を乗じて計算されその標準時間は標準作業能力を有する標準工が製品完成に要する時間を製品毎に五分、十分というように分数で定められている。これを指定作業分数という。そして作業員の加給は完成した製品の作業分数に時間賃率を乗じて計算され而も加給は基本給に月平均四五%まで認められるから作業分数の切下が収入に及ぼす影響は大きいのである。

(ホ) 申請人は昭和二十五年四月二十七日細胞員広瀬武夫と共に風邪のため四十度の高熱で病臥中の栗原設備課長宅に押しかけて、面会を強要し家人がその旨を告げてこれを断つたにも拘らず「一寸でよいから」といつて強引に上り同課長の枕下に坐り込んで同年二月十五日の昇給について約二時間の長きに亘つて昇給率の公開を迫り詰問を浴せ病床の同課長を吊し上げた。右は組合の活動方針と何等の関係なく、工場の厳秘事項であることを知りながら前記の「課長に昇給の公開を迫れ」という悪質の細胞活動の一環としてなされたものであつて会社業務に非協力の現れである。

(2) 整理基準第九項該当事由

昭和二十三年八月十四日のユニース颱風による豪雨のために翌十五日政府米及び駐留軍家具を保管していた車輌工場に浸水したが当日は休日であつたのでその排水作業のために栗原設備課長が課員に命じて工場付近在住の戸沢を含む約十名の者に大至急出勤するよう呼びにやらせたところこのような場合戸沢は係長として出勤すべきに拘らず「一寸用があるから」といつて正当の理由なくこれを拒否した。これがため同課長は排水作業の指揮実行に支障を受けたのであるが、右は申請人の上司の命令に対する反抗的態度の表明に外ならない。

(三)  申請人春日稔について

整理基準第四項該当事由

(イ) 会社は昭和二十四年十月当面の危機打開のため亀有工場従業員中から二百名を小松製作所の相模製作所に転属(その意義については後述する)させることの方針を定めその交渉を始めたところ、日本共産党亀有細胞は「会社は組合ととりきめた個人の意思を尊重することを一方的にふみにじつている。」という虚構の事実を掲げたビラを配布し、「相模ケ原はアメリカの軍事的管理が施されている姥捨山」だという掲示をして転属に関する従業員の反感を煽る宣伝を行つたが、申請人は同細胞の細胞員として積極的に具体的活動をなす地位にあつた者で右細胞の活動方針に呼応し、「厭だといつて頑張れば相模へ行かなくともすむのだ」とか「アメリカの奴隷になつて兵器を作ることになるのだ」と宣伝煽動して反対運動を行い、会社と総連合との間に同月十一日基本的な確認事項が成立し同月十三日亀有工場労働組合との間に長期出張の協定更に同月二十八日本社総連合間に正式に転属の協定が成立したのに拘らず、右申請人はこれを無視し就業時間中自己の職場を放棄して転属予定者である鉱山機械課綱島要、多田敦彦、長島利一等に対し「転属に反対せよ」「反対すれば行かなくてもすむ」等相模における労働条件の劣悪を誇大宣伝して各人毎に転属を拒否するように煽動し更に一般に転属の指名を受けた者を一ケ所に集合させて反対気運を盛り上げようと計りこれらの者に亀有労農会館(共産党葛飾区委員会の事務所のあるところ)に集合するようよびかけ廻るなど転属反対運動に従事した。

而して亀有工場においては前記二百名の転属計画のところ、実際に指名したのは百十名であり現実の転属者は九十名に過ぎず結局右のような悪質な妨害運動によつて計画の実現は半数以下という不良な結果に終つたのである。ところで右の転属とは次のような経緯で行われることになつたものである。国は昭和二十四年夏頃連合軍の要請により連合軍の接収していた旧相模陸軍工廠の建家竝に施設を利用し兵器の修理を専属的に行う工場を設置し労務と技術を提携することとなり、小松製作所は特別調達庁からこの仕事を引受け会社はこれに協力することとなつたが、その実質は会社が従来の綜合経営のためあらゆる機種と職種とを有しかつ多年培われた優秀な技術をもつており、前記の如く余剰人員を有していたので特に連合軍への協力を要請されたのである。しかし当時会社は制限会社であつた関係上小松製作所が直接の衝に立ち会社がこれに協力する形をとつたのである。しかして右に述べた相模製作所への協力は連合軍の要請によるものである以上、占領下にある我国の企業として当然の責務にあり、一方受註の減少による経営困難の際とてこれによつて会社の擁する余剰人員が幾分でも人員整理によらずして減少されれば眼前の苦境打開策としても時宣を得たものである。一つにはまた会社は優れたアメカの技術を学ぶ機会も得られることとなるので会社は積極的に協力することを決し、同年八月五日連合軍の指示する条件に基き小松製作所と調達庁との間に契約を締結した。しかして当時将来において小松製作所と会社との共同出資により、会社と子会社同様の関係に立つ別会社を設立することが見込まれていたが早急に実現することは期待できなかつたので新会社設立までの間小松製作所の相模製作所という形で経営することになつていたが会社従業員がこれに赴くについては一応子会社ができたという仮定のもとに相模製作所への転属と称し実際の取扱も整理による退職とは趣きを異にし退社と言わず転属といい転属者に対しては退職金規定中やむを得ない事由による退職として取り扱い赴任旅費特別の諸手当、加給、休暇を支給し転属者の給与は会社におけると同一の額を保証することとしていたのである。

しかして会社は昭和二十四年十月十一日総連合との間に転属に関する協定を結び基本的な確認事項を定め、これに基き亀有組合との間に同月十三日長期出張の協定を結び、更に同月二十八日総連合との間に正式の転属協定を結んでいたのであるから、転属問題については人員整理問題等の重要な問題の解決を含みこれにつき総連合の協調的態度に拘らず申請人は共産党亀有細胞の有力な活動分子として会社の右方針に対する細胞の妨害的態度に基き前記のように活発に転属拒否の反対運動をすることは会社に対する業務の非協力を示すものである。

(ロ) 昭和二十五年三月鉱山機械課の従業員野島武夫が作業によりカブレを生じ眼疾を併発した事件をもつて申請人は亀有工場の強制動員によるものとして職場内で会社を誹謗宣伝し他の亀有細胞員と連絡を保つて細胞名義で右の趣旨の誇大掲示をなし動員反対の煽動運動のきつかけを作つた。動員作業とは当時の受註減少による無作業状態をなくすため、比較的作業量の多い職場から閑な職場の従業員に応援を求めて仕事をさせることを指称し、経営上も労務管理上も経営困難な会社として当然避けることを得なかつた臨時の措置であり無作業の従業員は加給が二分の一(給与総手取の三分の一)の減少となるのを作業を与えて収入減を免れさせていたのであるが鉱山機械課では当時作業時間が一ケ月六百時間に達していた状態で作業員は勿論組合としてこの間の事情については十分な認識があり何らの異議もなかつたのである。しかも右の動員作業は産修理作業で簡単な危険を伴わない作業でありその災害は作業員の特異体質による偶発的事故にすぎなかつたのである。したがつて右の申請人の所為は会社に対する業務の非協力を示す。

(ハ) 昭和二十五年五月初旬申請人は亀有工場輸送機械課において製造中のレツキングクレーンは兵器であると事実を歪曲しその出荷に反対すべきであると煽動し、同課従業員の生産意欲を阻害し会社の業務に重大な妨害をなした。

(ニ) 申請人は平素作業時間中屡々同僚に対し議論をしかけてその作業を妨げ又は多数作業者の始業を遅らせ或は上長の目の届かぬ作業場において仕事を放棄して共同作業をなす同僚に迷惑をかけることが多かつた。右の事実は職場規律を紊すという整理基準にも該当するわけであるが右は亀有細胞の活動としてなされたものであるから業務に非協力な事実としても考えるべきである。

五、同三の(三)の主張に対し本件人員整理は全従業員について厳密公正に考課し基準該当事由を認定して申請人らを解雇したに過ぎないものでこのことは経営合理化の上から真にやむを得ない措置で申請人らの組合活動が活溌であつたからではない。不当労働行為の成立する余地はない。

第三、被申請人主張の解雇理由に対する申請人の反駁

申請人らに対する解雇理由として被申請人の主張するところは昭和二十五年五月二十七日明示されたのではなく本件仮処分申請の後に至つて捏造されたものでしかもその解雇理由とするところは申請人ら各個人の能力の問題ではなくして常に労使対立の激しい場合の問題が多くを占めていることによつても申請人らの活溌な組合活動を理由とするものにほかならない。しかして申請人らに対する解雇理由は次に述べるとおりいずれも解雇基準に該当しない。

一、申請人箕浦について

(1)  整理基準第四項関係

吉田部長の昇給に関するビラ撒きの点

昭和二十五年四月十五日朝被申請人主張のビラを配布したことは認めるけれども右は組合活動としてなされたものであるからこれを整理基準に該当する事由とすることはできない。即ち右は昭和二十五年四月五日なした組合の賃上要求に基く賃上闘争の一内容をなしているもので亀有細胞の細胞活動に限局されたものではなく、総連合の闘争方針にも一致するものであつた。昭和二十五年三月の昇給は会社が職制の強化組合員相互の離間を狙つた極めて不当な昇給で、そのため組合員の不満が強かつたし、組合活動の上から見逃すことのできぬ重要な問題で昇給に対する考え方が組合と会社とは対立していた。そして総連合は組合に対して査定方法や調整予算の使用についての監視を要請したり、昇給の結果却つて減少になるという問題が起つたり昇給に対する会社の意図は承認できないから総連合として再査定を要求しようという問題も起きた。したがつて組合としては当然昇給における会社の意図を賃闘争によつて打破らなければならないし、賃上闘争は組合員の職場闘争から盛り上げねばならないと考えた。そして組合の賃上闘争にとつて極めて重要な職場闘争を捲き起すきつかけをつくるために前記ビラを配布したもので、この行動は組合の運動方針に基くものである。元来昇給率を秘密不公平にすることは会社の組合員間の離間策であり社会上公正な措置であるとは思えない。しかしてこれに反対する組合員が昇給の不合理をつくことは許さるべきことである。かように申請人の行為は組合員たる地位において組合の活動方針に忠実に従つたもので正当な組合活動で業務非協力ということはできない。

(ロ) 昭和二十五年五月十一日の職場離脱の点

申請人が昭和二十五年五月十一日から五月十三日まで連日他の亀有細胞員十数名とともに朝輸送機械課職場へ赴いてデモンストレーションをしたことは認めるけれども右は就業時間中ではなくすべて始業前であるばかりでなく、当時組合員が問題としていた馘首撤回、賃上要求を達成するため組合員の一人としての組合活動であつて、また沢田組長に関する被申請人主張のビラについては五月十一日午後一時から開かれた執行委員会においてはじめて知つたもので申請人はこれに関知していない。

したがつて申請人の行動は馘首反対闘争に打ち勝つために闘争意識の昂揚を目的としたものであつて組合闘争方針にも一致するものである。しかして会社は同年五月八日総連合の賃上要求に対し馘首をもつて応酬してきたのであるからその結果労使の対立が激化し会社業務が正常に行われなくなつたことは会社の自ら招いた結果であつてこのことをもつて整理基準事由とすることは不当である。

(ハ) 工場長室侵入の点

申請人は工場長室に入つた事実はない。申請人は同日午前職場から便所に行つた際組合員が拍子木を叩いてデモをやつているのを知つてその状況を見に行つたものであつて申請人はデモをやつている組合員に向つて「これでは圧力がかからぬから扉をあけよう」といつて被申請人のいう秘書室と工場長室との扉をあけて工場長室から二三人の幹部がでてきたときワツショイワツショイと言つてデモの気勢を高めただけで職場に引上げた。隣室の秘書室に入つた程度で扉をあけてデモの騷音をきかせただけのことであるから、争議行為として認容されるべきもので、業務の運営が妨げられる程のものではなかつた。しかして当時は前記のとおり突然会社が馘首の提案をした直後で組合の執行部は対策に忙殺されていたため細部にわたる指導が行届かぬ場合もあつた。そこで申請人は組合の執行委員としてその自覚と責任に基いて事態を適確に判断し適切な措置を講じたもので執行委員会でもそのように対策をたてていたものである。また当時は争議状態であり執行委員は職場の中心となつて闘争を進めるため自分の席や機械を離れねばならぬことが多かつたので、組合ではこんな場合離席票を出さぬことにきめており、申請人の行動はこの組合の方針に基いたものでスト指令が出ていなかつたとしても職場の離脱ということは不当である。

なお被申請人のいう秘書室とは給仕程度の女子事務員が二三名いるだけで秘書室と呼ばれるべきものではない。

(ニ) 工場内デモに参加の点

被申請人主張の事実中就業時間中であるとの点を除き他は認めるけれども、右の行動もまた組合活動として容認さるべきものである。前記(イ)に述べたように組合員一人一人の闘争が組合員の基本線であり、申請人らは前記闘争のため組合員を激励するため各職場を廻つたものであり、組合員に合流するよう呼びかけたことは組合員一人一人が集つたデモ隊と考えていたからにほかならない。しかしてデモ行進は毎朝七時三十分頃組合書記局前を出発して組合の赤旗プラカードをもち労働歌を歌つて行進し工場の西門附近にある組合員に「一緒に歌いましよう」と呼びかけ同じ道順で職場にいくものに「職場まで一緒に行きましよう」と呼びかけ行進したもので職場離脱の煽動と見るのは不当であり、また一、二回就業時間たる八時十分をいくらか過ぎて解散したことあるのみで、おそくも八時五分頃に解散するのが常であつたから職場離脱の結果もあらわれていない。

(2)  整理基準第十項関係

(イ) 同僚梅田に対する発言の点

被申請人の主張事実を否認する。しかも被申請人主張の発言の程度をもつて生産意欲を害すべきものとは考えられない。事実そのような結果も起つていない。

(ロ) 工務係職場会における発言の点

被申請人主張事実を争う。被申請人主張の職場会は昭和二十五年四月十三日執行委員会の決定に基いて行われ、当時行われていた賃上要求のために野坂副部長に対し工場幹部としての努力を要請したのであるが、申請人の発言は、野坂副部長の「亀有工場の経営状態からみて要求に応ずることは至難である」というのに対し「工場幹部が真に組合員の生活を考えるならば銀行から金を借りてくることも考えて貰いたい。工場幹部の努力によつては今発送高があがらなくとも将来発送高があがる見透しがたてば銀行も金を貸すと思う」と主張したに過ぎない。かかる断片的な発言をもつて生産意欲を阻害するとはいえない。

(3)  整理基準第七項関係

無断離席の点

申請人は本件人員整理発表前には離席についてはすべて所定の手続をとつており人員整理発表後には手続をとらぬことはあつたが、それは組合全体がそうであつて、そのことについて上長から注意を受けたこともなければ、注意を受けねばならぬような離席をしたこともない。申請人は当時執行委員であつたから解雇反対闘争という組合にとつて最も重要闘争を推進するための組合活動のため離席することは当然で、職場の係長を含めたものが申請人の右闘争を応援していたのであつてそのために迷惑をかけるようなことはなかつた。殊に五月八日以後は紛争状態であつたから離席は組合員としてやむを得ない。さらに会社はこれら離席の時間につき減給しているのであるからこれは組合活動のため離席を正当としこれを認容しているものといわなければならない。

以上のとおり申請人箕浦には解雇さるべき理由はない。然るに過去十八年真面目に勤務してきたのに拘らず解雇されたのは同申請人が昭和二十二年以来亀有組合の副委員長最高闘争委員生産管理部長に就任し、熱心に組合活動をなし、常に困難な闘争において組合員の先頭に立つて行動してきたからにほかならない。

二、申請人戸沢について

(1)  整理基準第四項関係

(イ) アカハタ配布の点

申請人は就業時間中ついでの折に日本共産党の機関紙等を渡したことはあるが、売り歩いたことはしていない。また、係長就任後はアカハタ配布に従事していた事実はない。網正雄が配布していたのである。

(ロ) 朝礼における共産党宣伝の点

申請人の係での朝礼は八時十分ないし十五分頃には終つており、またその際安全衛生等の諸注意と織りまぜてソ同盟の工場の話をしたことはあるけれども、それは特に共産党の宣伝をしたのではなく申請人の係では皆作業に対する研究が盛であつたのでそのための教育をしたに過ぎない。

(ハ) 冶工具工場における共産党宣伝の点

申請人は作業時間中ストーヴの周囲で部下の雑談に仲間入りしたことはあるが、部下が長談義をしていれば遠慮なく注意をしているのであり、被申請人の主張するように特に共産党の宣伝活動をしたことはない。申請人は部下が時間中ストーヴで暖をとることを余り咎めなかつたけれども、これは工場が屋根が高く広く、かつ鉄棒を握つてする作業であれば咎めるべきではないと思つている。

(ニ) 作業分数を切下るべきだとの発言の点

被申請人主張のような発言をしたことはなく、政党の利害のため工場の不安動揺を来すことを企図した事実もない。会社亀有工場は昭和二十四年初頭から生産原価二十五パーセントの引下を実施していたが、この原因は占領経済政策の結果値引をして受註するという甚だしい無理をしておりその結果は労働者の賃金面に影響を及ぼさずにはおかず、職場でも具体的に作業分数の引下が始まつており作業員が不満をもつており作業員と工務班との間に指定作業分数の改訂が行われていた。この際組合では当時加盟していた産別会議全日本金属労働組合を脱退の可否を問う全員投票あり申請人はその問題について意見を問われたとき、ヤミ収入に頼らずとも生活を守つていくためにはあくまでも闘う組織を守るべきだといつたに過ぎない。しかしてそのことについて当時上司の設備課長から何ら注意を受けてはいないのである。

(ホ) 栗原課長訪問の点

申請人が栗原課長宅を訪問したのは四月十日であつてそれも約一時間に過ぎず、その訪問理由も亀有書記長たる地位に基き査定の真相をきくためであつて同年四月八日行われた昇給は甚だ不当で組合活動をしていたものには極めて薄く、このことは総連合はじめ組合内において問題となつており総連合も同年二月二十七日付「政策的査定を排撃せよ」との指示、三月二日付「昇給協定要請」の通牒を出しており、申請人の行動はこの趣旨の実行をしたものである。特に昇給闘争は単独でとり上げられたものでなく、常に賃上の補助的闘争としてとり上げられており、唯殊更に大きくとり上げることは賃上の闘い方を弱くするとの見地から組合はこれを全面に押し出すことを避けただけのことであつて、申請人の行動は組合活動であり、しかも右は昇給の辞令交付の日から後のことであつて業務妨害の目的を有するものと考えられるべきものではない。

(2)  整理基準第九項関係

申請人が被申請人主張の日に工場に出勤しなかつたことは認めるけれども、右は被申請人主張のように上司に反抗するものというべきことではない。

同日申請人を訪れた手塚昌延は申請人に対し冶工具工場に被害のなかつた状況を詳しく報告したのみで車輌工場の排水工事の話などはせず設備課長の出勤命令の伝達の趣旨などは極めて曖昧であつたばかりでなく、当時の状況は降雨量からみて緊急の事態とは考えられなかつたのであり、また一方申請人は当日浦和市にある実家を妻子を同伴して訪問する予定であつて、これは申請人の妹の婚約者と初対面することにもなつておつたのである、右のような事情であつたから申請人は緊急の事態と考えず栗原設備課長からの出勤命令はないものと考えて出勤しなかつたのであるから上司の命令に反抗する意思もない。もし反抗する意思ありとするならば当時有効な就業規則違反として当然問題とされるべきであるのにこれらのことはなかつたのである。なお右車輌工場は三菱倉庫に貸与しており直接監理の責任を会社はもつておらないのであり、かつ申請人は設備課冶工具係長であつて車輌工場とは何らの関係も有していない。そればかりでなく、栗原課長のとつた措置も不可解で直接の作業責任者松本整備係長モーター配線作業責任者たる電気主任技術者平岡係長車輌工場の監理責任者菊池工務班長に対してはいずれも呼出しが可能であるのに最も関係の薄い申請人のみを呼出している。さらに申請人は昭和十三年昭和二十二年の水害時にはいずれも率先してことに当り表彰されているのに今本件整理において右のユニス台風の際の事実をもつて整理基準に該当するとすることは不当である。

以上のとおり被申請人主張の解雇理由たる事実はすべて整理基準に該当しないのに、昭和十一年三月入社以来昭和二十五年五月二十七日まで、無欠勤無遅刻無早退で有給休暇も常に残しているという精励振りで、かつ冶工具係長としての実績も高く評価して然るべきであるにかかわらず申請人を解雇するのは結局申請人が亀有組合結成以来ほとんど連続して執行委員最高闘争委員教育宣伝部長等に選任され、殊に昭和二十四年六月以降は組合専従者として書記長(二期)生産管理部長等に選任され枢要な地位に就任して労使の対立の中にあつて熱心な組合活動をしたからにほかならない。

三、申請人春日について

整理基準第四項関係

(イ)  相模転属反対運動の点

申請人は被申請人の主張するビラを配布したことはあるけれどもそのビラの内容は真実であり、しかもそれは会社と総連合との協定成立前のことであつて、当時における総連合の方針に即応し多数従業員の要求を反映したものである。また十一月上旬福島勝義らの職場に赴いて福島らの相模転属に関する話に加わつたことはあるけれども、それは昼休みに近い職場にいる同年輩の友人として福島の処に遊びに行つただけのことで、その際申請人が個人として米軍下にある相模造兵廠の復活を日本の軍事化の一環であるというかねての見解を発表したに過ぎず相模転属拒否の煽動というべきものではない。しかして相模転属が会社所期のとおりにいかなかつたのは相模作業所自身の無計画会社の自立性の欠如の結果にほかならない。

なお相模転属の実情は次のとおりでかような転属に反対することは労働者の権利であり、会社業務に対する非協力というべきものでなく、総連合も当初の方針は転属に反対であつた。即ち、会社は労働組合には秘密に株式会社小松製作所と協定し、被申請人主張のように二千人の労務供給を行うことになつたが配置転換される従業員は解雇せられ新に小松製作所員となり相模製作所で作業するものである。ところが小松製作所は業績不良で米軍特需に活路を求めんとしており、企業として不安定で、会社からこれに転属することは家族にとつても不安であつたが、殊に相模製作所は米軍の管理下にあり従業員は米軍の直接指揮下で労働しなければならず組合活動や政治活動など日本人として憲法に保障された基本的人権も作業所内においては事実上認められず又経済的にも職階制の採用によつて将来の賃金切下が予想されたことや物価、住宅医療施設などすべての条件が悪く従業員は配転指名を極度に恐れ後日に至つて日立復帰を希望するもの続出した。しかして総連合は昭和二十四年下期には人員整理を行わないこと会社の自立態勢を協議すること及び転属者の事情を考慮することを条件として諒承したところ、会社は転属者の事情を考慮するどころか転属命令を絶対命令として強行したのである。これは会社の経営方針かも知れないが人員整理であることに変りはない。かかる人員整理に反対するのは当然である。

なお労農会館に転属予定者を集合せしめようと説き廻つた事実はない。

(ロ)  動員作業反対の点

被申請人主張の掲示は申請人がしたものではない。しかして当時の動員作業は次の段階において配置転換人員整理にまで発展することが予想せられるもので労働者として無謀不当な動員に反対するのは組合活動の範囲内であり労働者の権利であるところ、被申請人主張の動員作業における事故は会社の軽卒な動員に基因するもので偶発事故でもなければ野島の異常な体質の故でもない。申請人が営繕の職場でこの問題がとり上げられたとき会社の動員に対する批判を行つたとしても作業員として当然のことである。即ち動員等により従業員を他の作業に従事させるときは会社は特に指導と注意に万全を期すべきで殊に強風下におけるコールタール塗布作業の如きは皮膚や粘膜に障害を与える虞のある作業で一段と慎重な指導と注意が肝要なのである。これをしなかつた為めに起きた本件事故について批判を加えるのは当然である。

また亀有細胞が労働者の政治的組織としてこのカブレ問題をとり上げ政治的角度から捉えて会社の許容していた掲示板により従業員に訴えることも当然のことで非難さるべきことではない。

(ハ)  出荷反対の点

申請人がレツキングクレーンは兵器であるとの見解を発表したことはあるが、出荷反対をしたものではない。

右の発言は偶々職場の休憩時に談話の際問題になつていたレツキングクレーンに対する自己の見解を述べただけである。共産党葛飾地区委員会が発表したのも政党が政治的見解を発表したに過ぎず、しかも当時会社が本件人員整理を発表した直後であり、組合はその頃連日ストライキ等を繰返して馘首反対闘争は益々昂揚していた時期であり、同委員会も会社の馘首に対する組合の反対闘争を支援してストライキに対する組合員の団結を鞏固ならしめ、占領政策に藉口してストライキの足並を乱そうとする民同派の本質を暴露しようとするその政治的見解をビラによつて組合員に訴えようとするものである。

レツキングクレーンの出荷については組合でも五月九日の常仕執行委員会ではストライキによつてレツキングの発送を落すことをも含まれていることを確認している。

(ニ)  作業中の放談及び職場放棄の点

被申請人の主張事実はすべて否認する。

以上のとおり申請人には解雇基準に該当する事実は全然存在しない。しかも申請人は昭和十三年四月入社以来昭和二十五年五月二十七日まで母の死亡したとき一日早退しただけでその他無欠勤無遅刻で業務に精励しておる。それにも拘らず本件解雇のなされるに至つたのは、申請人は執行委員に選任され、宣伝部員として昭和二十二年九月から昭和二十五年五月本件整理に至るまでその任にあたり、また総連合の渉外部員として選ばれるなど組合結成以来常に労働者の先頭に立つて組合活動をしていたからこのことにより解雇されたものというのほかはない。

第四、申請人の不当労働行為の主張に対する反駁

被申請人において申請人らが解雇基準に該当すると主張する事実中共産党亀有細胞に関する事実は決して組合活動と混同さるべきではない。以下にその理由を詳述する。

日立亀有細胞は昭和二十一年秋頃組織せられ当時「愛される同志」なる機関紙を発行して活動を開始したが、昭和二十四年十月団体等規正令に基く届出をなし小堀明久はその責任者その細胞員は百余名であつたが、申請人春日は当初から細胞員となり、申請人戸沢同箕浦は昭和二十三年これに加入した。そして申請人戸沢同箕浦はその中核に属して計画指導を行い申請人春日はその具体的活動をなす地位にあつた。そして日立亀有細胞は日本共産党の政治目的のもとに多くの業務妨害業務非協力職場秩序紊乱等の行為を敢えてしてきたのである。例えば

(一)  キユーポラ事件、昭和二十四年六月四日午前七時五十五分頃前日第二鋳造課の職場大会においては公安条例反対ストを行わないことを決定していたに拘らず細胞員重山正久はキユーポラ(熔解炉)装入作業場の手摺に「公安条例を撤回せよ」等のビラを貼りつけ「ストに起たないなら俺をやき殺せ」というスロガーンをぶらさげてキユーポラの中に下りようとしたので折柄火入れ準備中の同職場員は狼狽混乱に陥りこれと同時に各課細胞員らは「重山がキユーポラにとびこんだすぐ二鋳にいこう」といいふらしつつ職場を放棄して二鋳にかけつけ細胞員坂爪敏夫は同職場において「重山のやつたことを無にするなこれを契機に蹶起せよ」とアジ演説をなし、その他の細胞員もこれに応じてアジ演説をしあるいはこれに勢を添えた。このため各職場はその始業は四、五十分おくれ関連職場の作業にも支障をきたした。

(二)  生活資金借入名義による職場離脱煽動、昭和二十四年七月二十九日細胞は「今区には金が余つているから直ぐ区役所に行つて金を借りよう」という趣旨の共産党葛飾地区委員会名義のビラを配布し、細胞員である小堀明久らは職場において同趣旨のアジ演説を行いこのため十名以上の従業員が就業時間中作業を放棄してこれに参加した。ところがこの生活資金獲得運動は組合の全然関知しないところで、そのビラの内容も事実と相違し後日執行委員会において糾弾され細胞として陳謝すらしているのである。

(三)  相模転属反対運動、申請人春日の解雇理由に関して述べたとおりで、細胞の前記活動は決して組合運動ではなくこれに逆行するものである。しかも細胞員福島はその妨害行為について所属鉱山機械課の委員から糾弾され陳謝しているのである。

(四)  第二鋳造課配転反対運動、昭和二十五年三月亀戸工場のモーターの生産が一時停止せられるのやむなきに至り、この鋳物を製造していた第二鋳造課では無作業状態が生じたので短期間現場作業員を他の職場に就かしめたところ、四月五日動員反対のビラを配布し、動員を拒否して仕事を工場幹部に採らせようとする運動を展開し職業安定所に対する仕事よこせデモに結びつけ共同闘争の形で工場長に対する仕事よこせデモを画策して職場を煽動し動員者に対し動員反対を煽動した。

(五)  第二鋳造課配転反対運動、昭和二十四年十月亀有工場においては各職場の作業量の不均衡を是正するため第二鋳造課より製鑵課へ配置転換を行つたのであるが亀有細胞は坂爪加藤ら第二鋳造課職場細胞をして反対運動を展開させ、受入課たる製鑵課にも反対運動を起すよう画策して、組織的な配転妨害を行い同年十一月一日会社組合間の協定成立後も同じく加藤坂爪等において配転予定者を個別的に煽動して合理化のためにする右配転の実施を阻害したのである。又配転予定者となつた細胞員秋元秀雄の如きは配転先で最後まで就業を拒否した。

(六)  軍需品生産反対運動、申請人春日の解雇理由において述べたとおり。

(七)  鉱山機械課動員反対、申請人春日の解雇理由において述べたとおり。

(八)  昇給ビラ事件、申請人箕浦同戸沢の解雇理由において述べたとおりであるが、なお昇給率は工場における厳秘事項であつて、細胞員らは細胞員渡辺きみ子が給与計算担当者間で話していたのを聞知して細胞に連絡したところ企図するに至つたもので、申請人箕浦の項において述べたビラの記載は個人名を掲げ、虚構の昇給率をあげたものである。しかして細胞員らは右ビラによつて従業員に不満動揺を生ぜしめたものである。申請人らのほか、前記渡辺きみ子は時間中課長席に押しかけて長時間に亘り執拗に詰問したのち、小堀ら細胞員もそれぞれ課長に対して同様の挙に出た。右昇給ビラ事件についてはその直後の執行委員会で細胞が極秘事項たる昇給率を宣伝の具に供したことしかも委員長志村の虚構の率を入れて組合員の離間を結果するような運動をしたことは悪質な細胞活動であるとして厳しく批判糾弾され組合から名義人たる地区委員会に抗議するに至り亀有細胞も「この種ビラを今後工場の門前でまかない」という意味の陳謝をなしているのである。右の事件は全然組合活動にあらざることを示すものである。

以上のとおり日立亀有細胞は組合の方針とは関係なく会社組合間の協定等を無視して共産党の政治活動として一貫して業務妨害職場秩序紊乱行為をなしたものであつて危殆に瀕した会社が再建のために多数の従業員を整理せざるを得なくなつた際これら細胞活動を捉えて解雇理由としたのであるから不当労働行為ではない。

第五、証拠関係〈省略〉

理由

第一、被申請人会社が電気機械その他の製造販売を業とする株式会社であつて、その事業所として本店を東京都に有し、都内亀有ほか全国各地に多数の工場、営業所研究所を有すること。会社においては事業所毎にその従業員をもつて組織せられる単位組合たる労働組合があり、これらの単位組合が共通事項についての共同統一闘争のために総連合なる労働組合を結成し、総連合と単位組合とは併行的に会社と団体交渉を行う権利を有していること。申請人らは本件人員整理当時いずれも会社に雇われ、亀有工場の従業員であつて、亀有組合に所属していたところ、昭和二十五年五月八日開かれた総連合と会社との間の団体交渉の席上会社は従業員五千五百五十五名の人員整理を行う旨及び別紙記載のような整理基準並びに退職金支給基準を発表し申請人らに対して予告手当を提供して同月二十七日付で人員整理のため解雇するとの意思表示をなしたこと。

以上の事実は当事者間に争いがない。

第二、申請人らは右の意思表示は無効であると主張するのでその事由について順次判断する。

一、申請人らは本件人員整理については会社は総連合ないし亀有組合と何ら協議をしないで行つたから無効であると主張し、被申請人はまず協議すべき義務を会社は負担していないと反駁するので協議すべき義務の存否について検討する。

(一)  労働協約上の義務

総連合と会社及び各単位組合との間に申請人ら主張の条項を含む労働協約が昭和二十二年一月二十一日締結されその後六カ月毎に更新されてきたことは被申請人において明らかに争わないから自白したものと看做すべきであるが、右各協約は昭和二十四年六月十四日会社において各単位組合及び総連合に対して同年七月二十日の期間満了とともにこれを破棄する旨の通告をなしたことは申請人らにおいて認めて争わないところである。してみれば労働組合法第十五条第三項により期限の到来した昭和二十四年七月二十日の後は右各協約は終了消滅したものといわなければならない。尤も右協約には新協約の締結されるまで旧協約が効力を有する旨の定めがあり、右の期間満了後本件人員整理に至るまで新協約は締結せられていないことは被申請人の明らかに争わないところであるけれども前記法条の規定する趣旨は期限到来後労働協約はいずれか一方の当事者の明示した意思に反して存続することを許さないものと解すべきであるから協約中の右延期に関する条項の故に右協約がその後もなお存続するということはできない。

(二)  労働協約の余後效としての義務

申請人ら主張の協約中の各条項は労働条件その他労働者の待遇に関する定めであるとはいえ直接労働条件等を定めたものではなく、労働条件等を定めるにつき総連合或は単位組合が参加することを定めたものと考えられるから、その性質は直接労働条件等を定めた場合と異なり個々の労働条件を拘束するものとはいえない。従つて個々の労働条件の内容となつているものということができないから、右協約条項の効力は協約の終了と共に消滅したものというの外なく、所謂余後効なるものが法理上認められるべきであるか否かを論ずるまでもなく本件において余後効を有するものとすることはできない。

会社はこの点において協議義務を負うとはいえないから申請人の主張は失当である。

(三)  職場慣行としての義務。

会社が申請人の主張するような従前の慣行に反して業務上の措置をとつたとしても、そのことをもつて直ちにその法律的効果を否定すべき法理は見出し得ない。しかしながら、慣行に反する取扱は、権利の乱用或いは不当労働行為を推測させる資料となるので本件人員整理が職場慣行としての協議義務に反するものであるかを検討することとする。

成立に争いない甲第十八号証の二によれば会社は前記労働協約の破棄後も従来の労働条件等に関する諸規則の改廃については予め事前に亀有組合に通告する趣旨の文書を亀有組合に宛てて発しており、また経営に関しても、成立に争いない甲第十八号証の三、五、七ないし九、十一、十四ないし十七、十八のイ、ロ、及び真正に成立したものと認められる甲第十八号証の二十三ないし二十五、によれば会社はその生産計画、ライネツカー製歯切盤の日立工場への移管、職制の改廃配置転換、人事異動臨時の応援等に関しても会社と亀有組合とはその点について事前に会合が行われ前記歯切盤移管等については協定書が作成されており、真正に成立したものと認める甲第十八号証の二十六によると昭和二十五年五月夏時刻の実施については組合の抗議により組合と協議の上実施することとしたことが認められるけれども、一方前項甲第十八号証の二は単に会社が組合に通告する趣旨の文書に過ぎないものであることは明であり、また真正に成立したものと認める乙第二十一号証の一及び同号証の七によれば、昭和二十四年七月二十日(会社が協約失効を主張した日)以後従業員の人事について、及び従業員の身分に影響のある工場の一部廃止について組合と協議を遂げたことはなく、単に組合との無用の摩擦を避けるために事前に組合に説明をしたにとどまるものもあることが推知できるので、会社亀有工場において従業員の身分に重大な影響を及ぼす事項のすべてについて会社と亀有組合とが協議する職場慣行の存在を認めるに困難である。

よつて職場における慣行としての協議義務を会社が負担していたということはできない。

(四)  書面による協定に基く義務。

使用者が労働組合とその所属組合員の解雇について協定を締結している場合にはそれが労働協約によらないものであつても、使用者が右協定により解雇権を限定したとき、これに反する解雇の意思表示が無効と解せられる場合があるであろう、しかし単に協議することを約したにとどまる場合には、これに反する解雇は協議義務に違反するということはできても、その故に解雇を無効とする法律上の根拠はないと解するのが相当である。しかしながら(三)に述べたと同様不当労働行為ないしは権利の乱用となり得る場合があるのでこの点についても検討しよう。

成立に争いない甲第十七号証の参照一、六、前顕甲第十八号証の五、八、十四、十七、二十三、二十四、によれば会社は亀有組合と配置転換、人事異動等について協定書確認書覚書等を交換して協議実施していることが認められるけれども、これらにより会社が申請人ら主張のようにすべての事項について協議の上実施する趣旨のものであると解することは困難であり、前顕甲第十八号証の二も右の趣旨の疏明となし得ないことすでに述べたとおりであり、他に申請人らの主張を認めるに足る疏明はない。

してみれば会社が本件人員整理について亀有組合や総連合と協議する義務は存しないというのほかはないから、本件人員整理について協議したか否かの点の判断をまつまでもなく申請人らの主張は採用しがたい。

二、申請人らは、本件解雇の意思表示は整理基準に該当する事由がないのになされたものであるから無効である。と主張する。

会社は本件人員整理を実施するに当り、総連合と会社との賃上要求に関する第五回団体交渉の席上別紙整理基準を発表し、右基準に依る旨を明らかにしたことは前記のとおりである。してみれば会社は右整理基準に該当するもののみを整理の対象とする趣旨において自ら解雇権の行使を限定したものと解するを相当とするから、解雇には正当の理由を要しないのであるけれども、右の整理基準に該当しないものに対する解雇の意思表示は無効としなければならない。しかして右整理基準は会社が一方的に設定したものであるけれどもその内容は会社の恣意によつて決定せられるべきものでなく客観的合理的に解釈決定せられるべきものと解するのが相当であるところ、人員整理は特別の事情ない限り、会社の経営上の観点から余剰とせられる人員を企業より排除するものであるから、企業の効率的運営に寄与しないと認められるものを整理の対象とする趣旨において、整理基準を解釈しなければならない。しかして人員整理は以上の趣旨において実施せられるものであるから整理基準が従業員の非難すべき行為勤務態度等を該当事由とした場合でも、余剰人員の排除を目的としないで、一般に従業員を企業より放逐する場合と比較して、その非難すべき程度に軽重の差あることは蓋し当然である。換言すれば、通常の経営状態においては解雇理由とすることは首肯し難い程度の軽微のものであつても、これを整理基準該当事由とすることも許されなければならないのである。而して本件において申請人の争うところは専ら整理基準に該当するかどうかの点にあつて、人員整理の必要性とか整理人員の限定又は整理該当者と非該当者との整理基準上の序列設定の当否を争うものでないことは弁論の趣旨に照し明らかである。以上の見地に基いて本件人員整理をみるに、成立に争いない甲第十一号証の一と弁論の全趣旨を総合すれば会社は昭和二十四年春以来の経済状勢の激変と将来予想せられる激しい自由競争に耐えて経営を維持する目的のもとに経営内容を積極的に改善するためにやむを得ざる方策として別紙整理基準により本件人員整理を実施せんとしたものであることが認められるから、右の整理基準も前記の如く経営の効率化のために余剰人員を整理する趣旨においてその内容を合理的に解釈決定しなければならない。

そこで申請人らの整理基準該当事由の存否を被申請人の主張事実について検討する。

(一)  申請人箕浦について

(1) 整理基準第四項関係

(イ) 昭和二十五年四月十五日朝申請人が「吉田部長の昇給は二十二パーセントだ。云々」というビラを配布したことは当事者間に争いない。

しかして成立に争いのない乙第二十二号証の五の二十五、と真正に成立したものと認める乙第二十二号証の十五の二、三並に証人石川浩(28、3、11)の証言と弁論の全趣旨によれば申請人は日本共産党亀有細胞の構成員なるところ、会社亀有工場では昭和二十五年四月従業員に対する昇給を実施したが事前に同細胞員であつた渡辺きみ子を通じ会社が厳秘にしていた各人の昇給の内容の一部を知つた日共葛飾地区委員会は前記ビラを作成し、申請人は前同日朝出勤時の従業員に対し亀有工場正門前においてこれを配布したものであつて、右のビラの趣旨は日立亀有の従業員に対し右昇給が会社の部課長並びにいわゆる統促同と称せられる組合幹部については高率であるが、その他のものについては低率で寧ろ実収においては減少にさえなるとし、この昇給の実施は舶来職階制であり労働者をドレイにし一銭五厘の一ツ星にするたくらみであるとし、会社ではこれを秘密にし労働者の不満の起るのを防止しようとしているからすぐ職場で係長課長に対し公開を要求し責任を追究しようとするにあるものであることが認められる。

右の事実によれば日共葛飾地区委員会の意図は会社の秘密にしていた各人の昇給内容を暴露し、部課長ら会社幹部と一般従業員の離間を策し従業員の不満を煽ろうとするにあるのであつて申請人もこの意図に副うて前記ビラを配布したものと考えられるから申請人の右の行動は会社の業務に対する非協力な行為であると言わねばならない。

ところで申請人は右の行為は組合活動として正当なものであるからこれを解雇基準該当事由とすることは不当であるという。しかして人員整理についてその整理基準を掲げる以上、その整理基準は正当な組合活動を該当事由とする趣旨のものでないことはいうまでもないところ、組合活動は労使の対立の場において行われるものであるから闘争中は多かれ少かれ会社業務に対する非協力となることはもとより当然のことである。そこで右の申請人の行動が組合活動として正当のものであるかどうかについて考えなければならない。

真正に成立したと認める甲第二十六号証の一、二同三十二号証の十三の一同号証の十七の二並びに申請人本人箕浦慶夫(28、7、8)の供述によれば前記昇給は総連合より昭和二十五年一月十日提出された昇給の要求に対し会社との間に交渉が行われ、会社は一部特定者のみの昇給を固執して交渉は難航し漸く会社は同年二月二十五日全員について昇給を実施することを承諾して仮調印がなされ、同年三月一日正式調印を見るに至つたのであるが、これよりさきに二月二十七日総連合中央執行委員会は単位組合に対し昇給についての会社の政策的査定を排撃せよとの警告を発していることが認められるので組合員らがその昇給の査定について重大な関心をもち、これを事前に明らかにすることは各人の昇給内容が会社の厳に秘密にしているところであつても組合活動として会社は忍受しなければならないところである。

しかしながらさらに前顕乙第二十二号証の二十五、甲第二十六号証の一、二と真正に成立したものと認める乙第二十二号証の十の十三、甲第三十二号証の十七の三、四を綜合すれば、昇給に関する確認事項として最低を二パーセントとすることは明らかにされているばかりでなく、三月二十七日から三月三十一日に互つて開かれた第五十六回中央代議員会においては右の低率昇給は却つて減収になるものあることを予測せられたけれども、これが対策については各単位組合が旧基本給による生産比例給の配分を要求することによりこれを防止しようとすることの決議がなされ、(その後四月二十五日開かれた縮少代議員会においても総連合としての昇給の再査定要求は絶対に不可であるとの決議がなされている)たのに拘らず右のビラ配布運動は右の最低額によるときは却つて減収となるものであつて、昇給率が甚しく不当且不公平なりとし、組合幹部の一部(統促同と称していた)に対する昇給査定率が甚しく高率であることを非難しこれらを排撃しようとする趣旨のものであつて、これが配布については亀有組合の執行委員会において日共葛飾地区委員会の不当な介入干渉であるとして抗議がなされ、同委員会は右のようなビラを配布したことを陳謝したこと並びに当時組合は賃上要求に全力をあげ昇給問題を殊更にとり上げることを避ける方針であつた事実が認められる。右の事実関係を考察するときは申請人の前記行為は明白な組合の行動方針に反する活動といわねばならないのであるから、正当な組合活動ということはできず従つて右の行為にして会社の業務に対し非協力を示すものである以上会社から非難されてもやむを得ないものといわなければならない。右認定に反し組合が昇給問題について会社に対する反対闘争を展開する方針を採用していた趣旨の申請人箕浦、戸沢の各供述は採用しない。よつて申請人の右の行為は整理基準第四項に該当する。

(ロ) 申請人が昭和二十五年五月十一日から十三日まで他の亀有細胞員ら十数名とともに朝輸送機械課職場へ赴いてデモンストレーションをしたことは当事者間に争いなく、成立につき争いのない乙第二十二号証の五の二十ないし二十三と真正に成立したものと認める同号証の五の二十七前顕同号証の十の十三と証人石川浩(28、3、11)同佐藤佐の証言を綜合すると、昭和二十五年五月十一日朝亀有工場正門前において日本共産党葛飾地区委員会名義のビラが従業員らに配布され、前記のとおり申請人らを含む亀有細胞員数名のものが同日朝から同十三日朝まで連日デモを行い輸送機械課職場附近で解散したのであるが同課機械係運搬組の従業員らに対し前記ビラと同一の趣旨のことを強調して話しかけたこと、及び前記のビラは「会社は戦争に協力し戦争を初めさせた仲間であつて、軍需品を生産しているがこれは国を売り我々を奴隷とし戦争に追いこもうとする売国吉田内閣の政策と完全に一致している。それ故日本から戦争の危機をとり除くためには資本家が儲からない売れないといつている平和機械の製作を我々の要求として仕事をさがさせることだ。そのためにはまとまつて闘わねばならないのに職場の闘争に水をかけるものがいる。輸送機の沢田組長は『仕事をやれ仕事をやることが首切りを防ぐことだ』といつている。これは職制の切り崩しだ。輸送機の職場の仕事は戦争道具の一つに使われてるもので、このようなものは会社の手先となり督戦隊となつている売国奴だ労働者の敵だ」という趣旨のものであることが認められる。これによれば沢田組長が反組合的なものであることを従業員に訴えようとするものであるけれども、又他面においては明らかに会社の生産している輸送機職場における製作品が軍需品であるから戦争の危険を取り除くために放棄しなければならないと煽動するものといわなければならないから、申請人がデモを行い輸送機職場において右と同趣旨のことを強調して従業員に話しかけることはやはり会社の業務に対する非協力を示すものと言わなければならない。ところが、申請人は右のデモは就業時間前のことであり、正当な組合活動であるという。しかして前記のとおり当時は亀有組合において賃上要求馘首撤回を掲げて闘争中であり、右のビラには組合の要求を貫徹しようとする趣旨の含まれていることが明かであるので、申請人の右行動は一応組合活動のように見えないではない。然しながら真正に成立したものと認める乙第二十二号証の五の二十四、同号証の十の十四前顕同号証の十の十三と前掲各証言とを綜合すると、申請人は当時ストライキ実施中でなかつたに拘らず就業時間中自己の職場を離れて他の職場に赴いて前記のとおり煽動をなしたのであつて、その主要なる趣旨も前記組合の掲げる要求よりは寧ろ輸送機職場において、製作中の品は軍需品であるので、その作業を放棄せしめようとし、またその作業を督励する沢田組長を売国奴労働者の敵と誹謗し攻撃するにあるのであつて、また同課において開かれた職場大会において討議がなされ沢田組長を個人として攻撃することの当否について採決の結果多数決をもつて沢田組長は売国奴などと非難されるべきでないことが決定されたこと及び同年五月十一日開かれた組合執行委員会においても申請人らの右行動について討議がなされ、組合員個人に対する批判は組合の機関において討議し、前記ビラ配布については日本共産党葛飾地区委員会に抗議する旨決議がなされていることが認められるので、右事実を総合して考察すれば申請人の前記行為は組合の活動方針に反し独自の見解に基く行動であつて正当な組合活動の範囲を逸脱しているものというべきである。

右認定に反する申請人箕浦の供述は採用しない。なお右の点に関する甲第三十二号証の十二、十二の二及び申請人戸沢本人(28、5、16)の供述は右の判断の妨げとなすに足らない。

してみれば前記行為程度はそれ自体においては解雇をもつてその責任を問うべきではないにしても整理基準第四項に該当するものといわねばならない。

(ハ) 昭和二十五年五月十三日午前亀有工場工場長室において幹部が会議を開いていたところ、当日行われていた部分ストに参加していた組合員ら約四十名がこれら幹部に対し示威をなしていたが、申請人もその属する職場では部分ストを実施してはいなかつたけれども、これに参加してその隣室に入り同室に通ずる扉を開いて右の示威に気勢を添えたことは当事者間に争いなく、真正に成立したものと認める乙第二十二号証の十の十一、と前掲証人石川浩(28、3、11)の証言と右の事実を綜合すると申請人は就業時間中ではあつたが右会議を妨害する目的のもとに拍子木を叩いてデモをやつている組合員らに合流して前記隣室に入り圧力を強くするため扉をあけて工場長室に押入り会議中の幹部から退去を要求せられてもこれに応ぜず、押し返されて鍵をかけられた後もこれに体当りし、石川浩らがやむなく鍵を外して扉を押えていたのを押し戻してもみ合つておよそ二、三十分に互つて幹部らの会議を妨害したことが認められる。申請人は便所へきた際デモの状況を見てワツショイワツショイと気勢を添えただけで職場に戻つたというけれどもこの点に関する申請人箕浦の供述は採用しない。

申請人はさらに、右の行為は正当な組合活動であるという。しかしながら前記のように申請人が会社幹部の会議を妨害する目的をもつて、幹部である石川に対して暴力を行使したことは、正当な組合活動といえないこと勿論であるから右主張は、理由がない。してみれば申請人の右の行動は会社の業務に対する不当の妨害であつて会社業務に対する非協力な行為であるといわねばならず整理基準第四項に該当する。

(ニ) 申請人は昭和二十五年五月十六日以降連日にわたつてスト指令もないのに細胞員十数名とともに拍子木鉄片等を叩いて労働歌等を高唱しながら各職場をデモ行進し、従業員に対し参加をすすめたこと及びその解散の時刻が就業時に及んでいたこともあることは申請人も認めて争わないところであり、また真正に成立したと認める疏乙第二十二号証の十の十によれば右のデモ行進は朝始業前に行進を始めてはあるが、概ね就業時間中に及んでいたことが認められる。右認定に反する証人高橋栄一の証言は措信しない。してみれば、右の申請人の行為は一応会社業務に対する非協力といえるかも知れないが申請人らの組合は前記のとおり大量の人員整理に対し闘争中であり、右の就業時間内に行われた時間は僅々二十分位のことであることは右乙第二十二号証の十の十によつても窺えるので、申請人の右のデモ行進は多少職場従業員の始業準備が妨げとなることはあつたにしても右の程度では未だ不当な組合活動として非難すべきものではない。

被申請人は右は組合活動ではなく細胞活動として純然たる政治活動であり会社業務の妨害のみを目的とするものであると主張する。

しかしながら、申請人らが日本共産党亀有細胞に属し、右のデモに参加したものは概ね細胞員であり、亀有細胞員の本件闘争中における活動が屡々組合の方針と相反し或いはこれを逸脱するところがあつたとしても、申請人の前記行動が組合の闘争目的に即応するものであり、闘争方針に反するものでない以上、申請人が右の行動によつてその抱懐する思想の実践を企図したものであつても、これをもつて組合活動とみることができないものではない。それ故申請人の行為は整理基準第四項に該当しない。

(2) 整理基準第十項関係

(イ) 真正に成立したものと認める乙第二十二号証の十の三、同号証の十の五のロ、同号証の十の十に証人野坂賢次の証言によれば申請人は昭和二十五年四月頃職場の同僚梅田敏之らに向つて被申請人主張の(2)の(イ)に記載のような発言をなしていることが認められるのであるが、右のような発言をもつて他人の生産意欲を阻害するに至るものと認めるには困難である。右梅田敏之が右の事実を副部長野坂賢次につげたからといつて従業員らの生産意欲が阻害せられたものとするのは失当である。

被申請人は右の発言は申請人の属する亀有細胞の細胞活動の一環をなすものであつて軍需品生産反対の運動である、というけれども、申請人の思想的傾向からその細胞活動の一環として右の発言がなされたにしても、職場の同僚に対する右のような断片的発言で思想傾向を同じうしない同僚の生産意欲が阻害せられるものとは到底認め得られない。

よつてこの点も整理基準第十項に該当しない。

(ロ) 昭和二十五年四月十五日申請人の属する製造部工程係事務所において開かれた同係の職場大会において、申請人がその席上被申請人主張の如き発言をなし野坂副部長との間にこれを繞つて論争が行われたことが認められるのであるが、被申請人も認めるとおり賃上げ及び作業衣要求の件について開かれた職場大会であるから、かかる席上賃上に応ぜられないという会社側の意向に対して今直ぐ発送高の上る見透しがたてば会社は融資を受けてでも賃上ができるという意見を開陳したからといつて、従業員に対し作業意欲を阻害するものだとすること容易に納得できない。

そして又申請人の右の意見は申請人が亀有細胞員たることから出でたものであるとしても右の結論を異にしない。

よつてこの点も整理基準第十項に該当するものではない。

(3) 整理基準第七項関係

真正に成立したものと認める乙第二十二号証の十の五、八に証人増井進の証言によれば、申請人は昭和二十五年四月中旬来連日業務上以外の理由で無断で職場を離脱して特に五月初旬以降は殆んど職場にいないことが認められるので右は会社業務に支障を与え職場の秩序を紊すものであるといわねばならない甲第三十二号証の十の一、二は右認定を左右するに足りない。

申請人は会社において職場離脱の時間を給与支払の際差引いているから正当なものであるというけれども、給与支払の際差引かれているからといつて無断離席が正当化されるものでないことはいうまでもない。申請人の主張は採用しがたい。

申請人はさらに当時は闘争中であつたから正当な組合活動であるという。しかしながら右の職場離脱はすべて組合の指令するストライキ実施のためであることは主張も疏明もないのであるから申請人らのこの点の主張も採用できない。

よつて申請人の右の行為は整理基準第七項に該当する。

(二)  申請人戸沢について

(1) 整理基準第四項関係

(イ) 申請人は設備課冶工具係長となる以前就業時間中に他の従業員に日本共産党機関紙を配つたことがあることを認めており、証人手塚昌延(28、8、31)同今泉安寿の各証言によると申請人は右係長就任後も右機関紙その他のパンフレットなどの購入を従業員にすすめ、週に、二、三回位機関紙パンフレットを配布したりしたが右は就業時間中に行われかなりの程度の執拗さをもつて購読勧誘がなされ、相手方は申請人の係長たる地位におされてそのすすめに従つたことを窺い得るのであるけれども、(この認定に反する申請人本人戸沢の供述甲第三十五号証の二十五の一、二、二十六の記載は信用しない)この程度の取引や配布などがなされることによつて会社の業務が阻害されるということはできないし、申請人の右行為により会社の業務に顕著な支障を来たしたことについての十分な疏明はなく又申請人が会社の業務に支障を来さしめる目的で右のような行為に出でたものであることについても疏明はない。

尤も申請人も前記亀有細胞の一員であることは申請人も争わないところであるが、本件人員整理当時における亀有細胞の会社業務に対する被申請人主張の事実からは亀有細胞が闘争時以外の平常時においても常に会社業務の妨害にのみ終始しているものであるといえないし、もとよりその細胞の一構成員の平常時における活動がすべて会社業務の妨害であると認めることはできない。

してみれば申請人の前記行為は整理基準第四項に該当しない。

(ロ)、正しく作成されたもフと認むべき乙第二十二号証の十四の五、六と証人手塚昌延(28・8・31)同今泉安寿同栗原常吉(28・7・8)の各証言によれば申請人は昭和二十三年夏頃以降冶工具係長として部下従業員を指導監督すべき地位にあつたところ亀有工場において始業時刻と同時に作業安全衛生上の注意や会社からの伝達事項を従業員に知らせるために五分から十分位の朝礼の時間が設けられていたが申請人はその時間に際し時には週に二、三回位ソ連におけるノルマやリコールの話とか蒙古の徳王の娘の話などをして二、三十分を費すことがあつて、午前八時十分の始業時間が午前九時頃に及んだ事例のあつたことが認められる。右認定に反する申請人戸沢の供述、甲第三十五号証の二十五の一、二の記載内容は容易に措信できない。申請人は従業員の研究心の旺盛に答えて指導教育の目的で会社の朝礼を設けた趣旨以外の話もしたのであるというけれども、前記認定の事実に照らしてみるに従業員に対する教育指導の目的のために談がなされたものと認めることはできない。尤も被申請人主張のように右が日本共産党宣伝の目的のもとに行われたものであると断定するには疏明は十分ではない。

右のような申請人の行為は会社が設けた朝礼の時間の趣旨に反するものであつて、その時間を他の目的のために利用し或は従業員の作業すべき時間を空費させたものであるといわねばならないから、会社業務に対する非協力として整理基準第四項に該当する。

(ハ) 正しく作成されたものと認むべき乙第二十二号証の十四の六、九、と証人手塚昌延(28・8・31)、今泉安寿、栗原常吉の各証言によれば申請人は冶工具係長として在勤中昭和二十四年頃部下のものが勤務時間中ストーブで暖をとつている場合でもこれを制止することをせず一緒に雑談に加わり時にはその雑談の際共産党に関する談話をしていたことが認められるけれども、その雑談によつて従業員をして三十分ないし四十分にもの長きにわたつて作業時間を空費させたことを認め得べき疏明は十分でない。しかして寒い時期にストーブの周囲で暖をとつている従業員に対して雑談をしかけたことをもつて業務に対する非協力という非難すべき行動に当るものと断定することはできない。

被申請人は申請人の行為は亀有細胞の細胞活動の一環としてなされたものであると主張するけれども、申請人が右のように雑談をなす際共産党の宣伝をする意図があつたにしても、特に申請人が作業を放棄して共産党の宣伝をなす目的をもつてなしたものであると認めるには疏明が十分でない。右のような作業中の暖をとる時間を利用してなされたからといつて、亀有細胞が会社業務の妨害のみを企図していると認めることはできないから申請人の右行為を会社業務に対する非協力ということはできない。

(ニ) 昭和二十四年三月亀有組合が産別会議全日本金属労働組合を脱退することの可否について全員投票が行われたのであるが、申請人はその頃その問題についてその職場で従業員に対しあくまで闘う組織を守るべきであるという見解を述べたことは申請人も認めるところであり、成立に争のない乙第二十二号証の十四の七、真正に成立したと認める同号証の八、十九、二十三に証人栗原常吉、同磯貝勉の証言によると、右産別会議系全金属組合から脱退の可否について全員投票をなすに当り、申請人は脱退反対を唱えていたが、同人の属する設備課では、脱退賛成の票が多かつたので、これを知つた申請人は憤慨の余り冶工具係所属の小島隆らに対し、「生産工場は非常に単分(指定作業分数)が低いので皆苦しんでいるから闘争意識が強い、設備課ではこれが高く収入が多いから弱いのだ、だから組合運動を強くするには単分を下げたらよいのだ。」という趣旨のことを述べたこと、そして指定作業分数とは被申請人の主張するものであつて作業員の加給計算の基礎でありその切下によつて収入減を生ずるのであるが、申請人は冶工具係長であつて、指定作業分数を決定する権限はないけれども、その決定について意見を述べ有力な影響を与える地位にあるので、その発言によつては指定作業分数を切り下げられる結果を生ずべきことをほのめかし、これによつて基本給の四十五パーセント程度を占める加給の計算基礎が低下し収入減となるもやむを得ない旨告げて作業員らに甚しい不安と、動揺を与えたことが認められる。右認定に反する証人大賀秀男の証言部分、申請人戸沢の供述(28・11・18)、甲第三十五号証の二十八の記載は措信し難く甲第三十五号証の二十五の一、二及び同号証の二十六も右認定を左右することはできない。

しかして以上の事実によつて考えてみるのに、申請人が右のような発言をなした趣旨は申請人の支持する産別会議系労組から脱退しようとする設備課従業員に対してはその指定分数切下により収入の減少を生じさせてもやむなしということにあるものと解しなければならないのでその趣旨に感得できる放言をなしこれによつて従業員に不安動揺を与えようとする意図を有するものとせられてもやむを得ないから右は会社業務に対する非協力ということができる。申請人は指定分数を切下るべきだと放言したことはなく、ヤミ収入による利得に頼らずとも生活を守つていくためにあくまで闘う組織を守るべきだと言つたと主張するけれども、この点に関する甲第三十五号証の二十八の記載内容、証人大賀秀男の証言、申請人戸沢本人(28・11・18)の供述は措信しがたい。

よつて右の点は整理基準第四項に該当する。

(ホ) 申請人が病臥中の設備課長栗原常吉の私宅を広瀬武夫とともに訪れ、昭和二十五年四月行われた昇給率の査定について質問したことは申請人の認めて争わないところであり、この事実と真正に成立したと認める乙第二十二号証の十四の二、十一、十九と証人栗原常吉の証言によると申請人らは同年四月二十七日栗原課長宅を訪れて面会を求め、同人が病気臥床中で面会を希望しないのを知り、且つ、必ずしも当日会談すべき格別の必要もないのに拘らずその病床において申請人らの昇給査定について質問し、その低率であることを難詰し執拗に回答を求めたことを認めるに十分である。右認定に反する証人広瀬武夫の証言、申請人戸沢本人の供述は措信しがたい。

しかして当時申請人らの属する日立亀有細胞の細胞員らは前記のとおり吉田部長らの昇給率を暴露して従業員と会社幹部らとの離間を策していたのだから申請人らの右の行為は以上の離間策の資料とする目的に出でたものであるという被申請人らの見解も強ち失当であると断定し難いところではあるけれども、既に述べたとおり、申請人らの行動の背景には亀有細胞の細胞活動があり、申請人らの行動も一面においてはその意味もあつたかも知れないが、従業員が自己の昇給率の査定について疑を抱いた場合その理由を明らかにするため、査定に干与した上司にその説明を求めることは無理からぬところである。尤も本件の場合、病気で苦しんでいる課長の病床において執拗にこれを要求することは避けるべきであるけれども、その結果課長の病気回復を遅延させた等の事由のため会社業務に支障を生ぜしめたことについては何ら疏明はない。そしてまた被申請人は昇給は厳秘事項であるというけれども少くとも当時闘争中で対立的立場にあつた組合員がその厳秘事項を探知しようとしたからといつて正当な組合活動の範囲を逸脱するものとはいえない。

よつて右の申請人の行為は整理基準第四項には該当しない。

(2) 整理基準第九項関係

申請人は昭和二十三年八月十五日亀有工場がユニス台風により浸水した際出勤しなかつたことは当事者間に争いないところ、前顕乙第二十二号証の十四の二、十一、十九と真正に成立したものと認める同号証の十六と証人手塚昌延(28・8・31、29・6・4)、同栗原常吉の各証言によると右ユニス台風による豪雨のために翌日の十五日には政府米及び進駐軍家具を保管していた車輌工場が浸水し、同工場の保管責任課である設備課の課長栗原常吉はポンプによる排水作業をなさなければならない緊急の事態であると考え、工場附近に在住する申請人ら十名の者に当日は休日ではあつたが、特に出勤を要請したところ、申請人を除き全員出勤したけれども申請人は同課所属冶工具係長であつたに拘らず、所用ありと称して出勤しなかつたことが認められる。申請人戸沢本人(29・2・19)の供述中申請人は出勤要請を明確に受けなかつたとする部分は前掲手塚の証言に対比してみるとき容易に措信できない。

申請人はさらに、会社は右車輌工場に対する保管義務を負わないものであるばかりでなく申請人は冶工具係長で車輌工場について責任あるものではないという。しかしながら会社が前記のような台風による災害のため工場施設等に被害あるにつきその防止のため従業員の出勤を要請した場合には従業員としては格別の支障のない限りこれに応じ被害の防止又はその拡大の予防のため会社に協力すべきであつて、別段の理由なくこのような努力を惜しむものに対して会社としては、会社の経営に寄与する誠意が少いものと判定することは無理からぬところであり、右のように所属上長より出勤を要請された場合これに応じないものが上長の命令に対して反抗的であると評価されてもやむを得ないものといわなければならない。しかしてこの場合、所属上長の事態に対する判断が適切でなく、休日中のものに殊更出勤を要請すべき事態ではなかつたとしても、上長の命に服し一応出勤するのが従業員としての信義則上の責務であると解すべきである。尤も当該従業員が右出勤命令に違反したことの故に懲戒処分に値するかどうかの問題は別論であるけれども人員整理の場合における基準として掲げられた上司の命令に反抗的なものと評価されることを妨げるものではない。

したがつて当時このことについて申請人が問責されなかつたからといつて整理基準の右条項に該当しないものとすることはできない。

(三)  申請人春日について

整理基準第四項関係

(イ) 真正に成立したものと認める乙第二十二号証の七の六、七、八、同号証の十六の二と証人岩松茂輔(29・10・29)の証言によると、会社は被申請人主張のような事情で亀有工場の従業員二百名を株式会社小松製作所の相模製作所に所謂転属させる計画を建て、その実行として昭和二十四年十一月中旬鉱山機械課の多田敦彦、長島利一、綱島要らをその転属要員に指名し、一旦はその諒承を得ていたところ、申請人は昭和二十五年十一月上旬福島勝義、新藤喜市らとともに右多田らに対し「相模では物価が高く、生活条件も悪いし、又非常に勤務がやかましくて煙草を吸つたり便所へ行つたりもゆつくりできない。再びアメリカの奴隷となつて兵器をつくることになるのだから反対するように」と勧告しさらに長島らの作業中の職場へやつてきて、「相模の件で相談したいから定時終了後労農会館に集合するように」とすすめたことが認められる。申請人はこの点について、申請人は福島らの職場の方へ遊びに行つた際、福島らが多田らと話をしているのに加わつて相模製作所の事情を述べたに過ぎないもので転属に反対するよう勧告したことはないと主張し証人新藤喜市、福島勝義、申請人春日はこれに副う趣旨の供述をしているけれども前掲各証拠と対比するとき措信できないし、他に前記認定を左右できる疏明もない。

してみれば申請人らは会社が現在の経営上の危機を緩和しかつは連合軍の要請にも答えようとして企てた相模転属に対し、転属指名を受けたものに拒否せしめて反対しようとしたのであるから会社業務に対する非協力を示す行動をとつたものといわれてもやむを得ない。ところが申請人は相模転属に反対するのは労働者の権利であるという。なるほど申請人が自ら指名を受けた場合はこれに反対することは労働者として権利の行使といい得るであろうが、申請人自らの転属を反対したのではなく他の従業員の転属反対をすすめるのだからこれをもつて正当な権利の行使ということはできない。ただそれが組合活動としてなされた場合には正当視されることがあるので次に正当な組合活動であるかどうかを考えよう。

成立に争いない甲第五号証、乙第二十二号証の八の十と証人岩松茂輔の証言によれば右の相模転属については会社は昭和二十四年八月その計画を樹立したが、申請人ら一部組合員間に反対の気運あるを察しこれについて組合と協議しその諒解を得て実行に移す方針のもとに組合と協議を重ね同年十月十一日総連合との間に主要部分について確認事項がきまり同月二十八日正式に協定が成立し、総連合も組合員中より相模転属者二千名を出すこと及びその詮衡については会社がこれに当ることを諒承し、但し会社は個人的事情を尊重すること組合は個人的に異議申入権を留保することと定めたのであるから、組合としては転属指名者が転属に反対する場合を除き会社の転属計画の実行に反対しないことを諒承したことが認められる。ところで前段認定事実によれば申請人らが前記協定成立以後右多田らに転属拒否を勧告した趣旨は同人の個人的事情に基いて反対を勧めたものとは解せられず、寧ろ相模製作所の実状に対する見解を述べ何ら個人的事情とは関係なく反対しさへすればそれでよいのだとの見地に基いてなされたものと解するの外なく、かかる行動は会社の計画する相模転属そのものに対する反対意見による活動であつて、前記総連合の決定した方針に反すると認めるのが相当である。

右認定に反し申請人らの右活動が組合活動としてなされたことの疏明はない。してみれば申請人の前記行動に出でた趣旨は組合活動とは別箇に亀有細胞の活動としてなされたものと推認する外はない。

それ故申請人の右行為は整理基準第四項に該当する。申請人らは相模転属についての会社の企図が成功しなかつたのは申請人らの行動の故ではないというけれども前記人員整理の基準としての会社業務に対する非協力ということは会社業務に対する支障という結果を生じた場合に限るのではなく、会社業務の妨害の意図をもつてなしただけで足るものと解すべきであるから、申請人らの行為が組合活動として正当といえない以上前記判断を左右するものではない。

(ロ) 真正に成立したものと認める乙第二十二号証の十六の三、四、七と証人岩松茂輔(29・10・29)、吉葉勇司(29・12・24)の各証言によると昭和二十五年三月十四日鉱山機械課野島武夫が被申請人の主張するような所謂動員作業による塀修理に従事中強風のため塗料のコールタールの飛沫が顏にかかりカブレを生じこれをこすつたため眼疾を併発し入院した事故が発生したが、その頃会社構内政党掲示板に、日立亀有細胞名義をもつて、野島が動員作業中の事故によりかぶれ失明するかもしれない重病に罹つた。これは会社の強制動員による結果で従業員はこのことに非常に不平不満をもつているという趣旨の掲示がなされたこと、右掲示がなされるについて申請人が主導的に関与していた事実を認めることができる。ところが前掲各証言によると、右の動員作業とは当時無作業となつた鉱山機械課員を他の作業に従事せしめたもので従業員らにとつては無作業による加給減少を避けるものとして必ずしも反対していたのではないことが認められるのであつて、野島の眼疾が作業による災害であるので申請人の右掲示が全くの虚偽の事実を記載したものとはいえないであろうが、右の掲示の趣旨は申請人の主張するように動員作業に対する会社の経営者としての配慮不充分を攻撃する趣旨だけであるとは到底解することはできず、寧ろ右事故を誇大に宣伝して不当に従業員に不安の念を生じさせ動員作業そのものに反対する申請人らの主張に同調的な気運を増大させ、以つて会社に対する非難の気勢を挙げようとする意図に出たものと解すべきであり、被申請人がそのように判断したことは不合理ではない。右認定に反する申請人戸沢、同春日の供述は信用できない。しかして動員作業そのものについては、前記のように従業員から不平不満をもつてみられていたのではなく、組合がこれに反対していたという疏明もないので、申請人の行為はもはや正当な組合活動ではなく会社の行う動員作業を妨害しようとする意図に出でた行動といわざるを得ない。

よつて申請人の右行動は整理基準第四項に該当する。

(ハ) 前顕乙第二十二号証の十六の四と真正に成立したものと認める同号証の十六の八に証人大畑銀造の証言によれば申請人は昭和二十五年五月上旬頃所属営繕課職場において当時同工場輸送機械課で製作中のレッキングクレーンが兵器であるから出荷に反対すべきだと主張しまた昼食の際二三回にわたつて大畑ら十数名の従業員に対してレッキングクレーンは台湾へ送る兵器であるから出荷しないようにしなければならないと主張していた事実を認めることができる。しかしながら申請人がレッキングクレーンを製造中の輸送機械課において同課所属職員に対して右のような主張をなしたとの疏明がないこと、申請人春日の供述によつて認められるところの春日は大工であつて亀有工場において木型部品の製作に従事するものであつて、レッキングクレーンの製作について直接重要な作業に従事するものでないこと及び証人大畑の証言によれば同人は営繕課において雑役に従事する者であつて右十数名もレッキングクレーンの製作に直接重要な作業に従事する者であることが窺えないこと等の事実を総合すれば申請人が右のように主張した趣旨は申請人の属する日立亀有細胞がレッキングクレーン等の製作に反対との見解に基いてその製作工程に直接重要な関係を持たない自己の職場内の同僚に対し理論上の一般的見解を表明したに止まり被申請人の主張するように会社従業員の生産意慾を阻害する意図はなく、また会社業務の妨害を目的とした言動ではないものと判断するのが相当である。従つて整理基準第四項の会社業務に対する非協力に該当するとはいえない。

(ニ) 被申請人は平素作業時間中屡々同僚に対して議論をしかけてその作業を妨害し或は仕事を抛棄して共同作業をなす同僚に迷惑をかけることが多かつたというけれども、乙第二十二号証の十六の二、九、十、十一によるも、申請人の右勤務態度のため他の同僚の作業の妨害となつたり或いは申請人の業務能率が上らなかつたということまで認定するには充分でなく、右の各証によつては申請人が職場を離れたことが屡々あることは窺えるにしてもこの程度で未だ整理基準第四項に該当するものとはいえない。

以上のとおり、申請人箕浦は前記(一)の(1)の(イ)(ロ)(ハ)(3)の点において申請人戸沢は同(二)の(1)の(ロ)(ニ)(2)の点において、申請人春日は前記(三)の(イ)(ロ)の点においていずれも整理基準に該当するものというべきであるから、この点において本件解雇を無効とすることはできない。

三、申請人らは本件解雇は不当労働行為であるから無効であると主張する。

しかしながら申請人らは右のとおり本件人員整理に定められた解雇基準に該当するものであるところ、申請人らがそれにも拘らず、なお、他の従業員より差別的に取扱われ本件解雇がなされたという事実については申請人の提出する全疏明によつてもこれを認めることができない。

申請人らが従来活溌な組合活動をしてきたからといつて、差別的取扱であることの疏明のない以上本件解雇が不当労働行為となるとはいえないこと明白である。それ故この点における申請人らの主張は採用できない。

第三、以上の次第で本件解雇が無効であるとする申請人らの主張理由はすべて採用できないので結局本件解雇の無効であることを前提とする仮処分申請は被保全請求権の疏明なきに帰し却下を免れない。よつて右申請を許容した当裁判所の昭和二十七年七月七日の仮処分決定は取消すべく、仮執行の宣言については民事訴訟法第七百五十六条の二により主文のとおり判決する。

(裁判官 西川美数 綿引末男 三好達)

(別紙)

整理基準

(1) 業務能率低く成績の上らないもの

(2)(3) 省略

(4) 業務に対し非協力のもの

(5) 省略

(6) 欠勤遅参早退の多いもの

(7) 職場の秩序又は風紀を紊すもの

(8) 省略

(9) 上司の命令に反抗的なもの

(10) 他人の生産意慾を阻害するもの

(11)(12) 省略

(13) 身体虚弱なるもの

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